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THREE BILLBOARDS -美しい「The Last Rose of Summer」の曲が心に流れ続ける…

THREE BILLBOARDS。

日本ではあまり宣伝されていませんでしたが、
アカデミー賞有力作品ということで気になって観てきました。 

THREE BILLBOARDSあらすじ】(公式HPより抜粋)
アメリカはミズーリ州の田舎町エビング。
さびれた道路に立ち並ぶ、忘れ去られた3枚の広告看板に、ある日突然メッセージが現れる。
──
それは、7カ月前に娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、
一向に進展しない捜査に腹を立て、広告社と1年間の契約を交わして出した広告だった。
一方、ミルドレッドは追い打ちをかけるように、TVのニュース番組の取材に
「犯罪を放置している責任はウィロビー署長にある」と答える。
努力はしていると自負するウィロビーは一人でミルドレッドを訪ね、
捜査状況を丁寧に説明するが、ミルドレッドはにべもなくはねつける。
町の人々の多くは、人情味あふれるウィロビーを敬愛していた。
広告に憤慨した彼らはミルドレッドを翻意させようとするが、かえって彼女から手ひどい逆襲を受けるのだった。
警察を追い詰めて捜査を進展させるはずが、孤立無援となっていくミルドレッド。
ところが、ミルドレッドはもちろん、この広告騒ぎに関わったすべての人々の人生さえも変えてしまう
衝撃の事件が起きてしまう──

Billboard-。
私、以前は屋外の広告を扱う広告代理店にいたので
そういった意味でも何となく気になり。

正直、想像していたストーリーとはだいぶ違いました。
想像以上にダークで、激しくて、めちゃくちゃで、自暴自棄なやるせなさがじんわりと滲んでくるような、
いつまでも擦り傷から血が滲んでくるような、そんなひりひりとした切なさを肌で感じるような映画でした。

見終わった後は、そうかみたいな静かな気持ちと、
この後どうなったんだろう。という気持ちに。

第一印象は、色々な感情がないまぜになって
暗いし、めちゃくちゃだな、これ。
だったのです

なのに、日が経つにつれて
深いところから、しんしんと浸透してくる感じが。

主人公ミルドレッドのはちゃめちゃさの後ろにある
圧倒的孤独。娘をなくした悲しみと苦しみと怒りと、やるせなさ。

ビルボードに名前まで出されて、時の人となるも、
人望があり街の人々から敬愛されているウィロビー署長。

様々なトラブルや差別、現代社会の悪とされるような種を
全部身にまとっているかのようなディクソン巡査。

この主な3人の一人ひとりの濃い背景が
観終わった後から後から、浸透してきて、
何故か日が経つほどくっきりと胸に迫ってくるのです。

キャストとともに、とても印象的なのが、
冒頭部分でかかる曲「庭の千草」。

題は「夏の名残のばらThe Last Rose of Summer)」

私は日本語の「庭の千草」の歌詞は学生時代から知っていたのですが、
原語の方の歌詞を初めて知って驚きました、あまりにもこの映画にぴったりすぎて。

元々綺麗なメロディーながら、何故か哀愁の漂う雰囲気があって
美しいけど悲しい曲だと感じていたのですが、
原語の歌詞を見て、なるほど、としっくりきました。

アイルランド歌曲/「愛する者なくして 誰が一人で生きられようか」(訳詞)

夏の名残のバラ 一人寂しく咲いている
他の花々は既に枯れ散り
近しき花も芽も消え失せた
美しいバラ色を思い起こせば
ただため息をつくばかり

「近しき花も芽も消え失せた」。

主人公は娘を亡くしています。
冒頭の荒涼とした大地に一本道、その横に巨大なビルボードが三枚。
もう色あせて剥げ落ちた

そんな描写から始まるのですが、観終わって数週間経って、
今あの映画を思い出すと、あの曲がずっとめぐるのです。

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映画自体は結構激しい描写も多かったのに、
何故かこの曲がしっくりきて、
やるせなさと悲しみと、そして
人を想う、何にも負けない強さと
ひっそりと一輪だけ咲き続ける花に象徴される
たったひとつ、貫かれた愛を思い出すのです。

以下ネタバレありです、ご注意ください※

・ミルドレッド。皆に敵視されながらあそこまでできるのは逆にすごい
現代社会って何故か被害者のほうが晒しものになって、
加害者のほうが名を伏せられてたりして。
被害者の親である彼女が少し行き過ぎた行動をすることに対して
街の皆が眉を顰めるのは、、、気の毒ながら確かにわかってしまうのが辛い。

・ミルドレッドはめちゃくちゃなやり方だけど
その後ろにある彼女の娘を思う愛と、誰に反対され、嫌がらせをされても
ものともしないある種の開き直りが、身を投げ出してでも、という思いが、
ひしひしと伝わってくる。愛ってなんだろうと改めて思う。

ウィロビー署長。この人の愛がまたじんとくる。
街のみんなのことを考え、同じ警察仲間、部下、同僚のことも思いながら
自身の病気と、立場に苦しむ署長。彼がディクソン巡査に宛てた手紙にじーん
しかし、ご家族が気の毒過ぎた

・ディクソン巡査。最初のディクソン巡査の印象。なんだこいつ。
アメリカのよくない部分だけ煮詰めたらこんな人になるのでは、
という感じの悪者だったのですが。
ウィロビー署長が亡くなる前に彼に宛てた手紙を、燃え盛る警察署で読んでからは、
死にそうな思いを何度もしながら、他者のために一生懸命に生きる。
自分自身が火に燃やされながら、ミルドレッドの娘の事件調書を必死で外に運んだところ、涙止まらず

彼がウィロビー署長の手紙によって、別人のように変わった姿には
胸を打たれるものがありました。

かの憎しみによって、誰かがまた別の誰かに憎しみを与える
逆もまた然り。
誰かの愛によって、誰かがまた別の誰かに愛を与える

この映画、まったく国も話も関係ないのに何故か
ブルーハーツの「TRAIN TRAIN」も思い出されて。

「弱いものたちが夕暮れ さらに弱いものを叩く」
「世界中に建てられてる どんな記念碑なんかより
あなたが生きている今日は どんなに意味があるだろう」

この歌詞がまたしっくりくる、そんな作品なんです。

正直、観終わった後は「この作品がアカデミー賞有力なのか
てな感じだったのですが、
この「むしろ後から、後からじんとくる」感。
これはやっぱり確かにすごいなと思うのです。

アメリカンな破天荒な描写も結構あって、
日本ではうーん、これってという部分もあるのですが
主人公たちの不器用で必死に食らいついて生きていく様というのが
めちゃくちゃなんだけど、なんか愛おしく見えてくる

不思議な、深い映画でした。
美しいあの「夏の名残のバラ(The Last Rose of Summer)」が今も心に流れます

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